大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第四十五回 地酒や 鷹ばん(東京都・小川町)

更新日:2012.02.01|居酒屋めぐり|

イメージ 冬将軍、到来!その夜、靖国通りでは、ビジネスマンがコートの衿を立て、吐く息も白く、足早に灰色の街を歩いていました。わたしもマフラーをぐるぐる巻きにして地下鉄の駅を目指していました。が、そのとき、ふと、コンクリートの合間からのぞいた薄い藍色に染まり始めた低い空に、一筋の細い月が冴え冴えと輝いていることに気づきました。冬の夜は都会の空気も澄んでいるんです。そして、北風の吹くこんな夜は、やっぱり日本酒だと思いませんか。ワインでもシャンパンでもビールでもなく、日本酒!そうとなれば、行き先を変えなくては。(笑)小川町の交差点を駿河台方面に上がり、通りから少し入ったところに灯りが見えました。今夜のお店はここにしましょう。地酒居酒屋の「地酒や 鷹ばん」です。

ポテトサラダで分かる実力

洋食店、ラーメン屋、カレー屋などの名だたる人気店をはじめとして地酒に力を入れている居酒屋も数多くひしめく神保町から神田にかけてのこの地区は、とにかく食と酒の激戦区。昨日まであったお店が今日はもう別のお店に、ということもしょっちゅうある生き残りの難しい地域です。そんななかにあって、来月、オープンして8年になるという「鷹ばん」の魅力はいくつもありますが、わたしの個人的意見では、「鷹ばん」の一番の強みは料理の美味しさ、それもお酒と互いを引き立て合う“料理力”だと思います。この日のお通しはポテトサラダ。これがお酒にとっても合うんです!美味しいポテトサラダであればあるほど、いいお酒とピッタリくるんです。メニューからこの夜、わたしがまず注文したのは『獺祭 寒造早槽 48』しぼりたての生酒。言うまでもなく、相性抜群!ポテトサラダに隠し味として小さく刻まれた“いぶりがっこの皮”が入っているおかげで、感触も味わいも楽しく奥深い。香り良く切れがあって味わい豊かな『獺祭』の生と、しっかり惹きあっていました。「鷹ばん」の実力、しっかり伝わってきました。

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大酒飲み様と呼ばれたい!?

イメージ 「鷹ばん」メニューはユニークです。とくにわたしが気に入ったのは、“大酒飲み様”という言葉です。注文するお酒は、徳利、大徳利、錫製のデカンタのいずれかで注文するのですが、容量が大きければ大きいほどお得になるという嬉しいシステムが取られているのです!“大酒飲み様”にやさしいこのホスピタリティを見逃す手はありません。わたしがこの夜、どのように相成ったかはご想像にお任せするとして、そう、皆さまも“大酒飲み様”と、あえて呼ばれてみませんか…!?

店内には随所にオススメメニュー、人気の料理などが一目で分かる工夫がされています。いかにも美味しそうで心惹かれ、「鷹ばん」名物である牛すじ煮込みと常陸風おでんをお願いしました。牛すじ煮込みはほんのりカレー味、味のある純米酒に合いそうです。常陸おでんの、しじみと昆布でしっかり煮出した澄んだお出汁は、コクがあって美味しく、“体に良さそう”だとも感じさせてくれました。「鷹ばん」ではボトル・オーダーの『獺祭 三割九分』とベスト・マッチです。お刺身、さつまあげも酒飲みの心を刺激する逸品でして…お腹一杯、いただきました。

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地酒の美味しさを伝えたい

気がつけば、35席ほどある店内はお勤め帰りの人たちでいっぱい。みなさんそれぞれ、お好みの地酒を楽しんで盛り上がっています。ここでは、日本酒が美味しいということは共通の認識ですが、全国的にみると日本酒の味、質の高さがわたしたち消費者に浸透しているとは言えない状況が続いています。地酒が美味しいという、そのシンプルな事実をしっかりお客様に伝え、広めている「鷹ばん」に感謝しつつ帰路に着きました。すでに月はビルの陰に隠れ、外気はさらに冷えを増しているはずなのに、体と心はポカポカしていました。お酒っていいなぁ。日本っていいなぁ。

今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

良いですよねぇ。昔の神田連雀町界隈。正確には少し外れますが、それでも昔の東京の風情が残って。僕も飲みに行きたいなぁ。最近ほんとに暇が無くて。あ、ぼやきになっちゃった。

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