フランスの大手新聞「ル・モンド」週末版にて1ページ丸ごと獺祭が掲載されました。
獺祭の由来と旭酒造の姿勢を伝え、最近の「交響曲 獺祭 磨~migaki~」「最高を超える 山田錦プロジェクト」「Dassai Joel Robuchon」などの取りくみを広く紹介するものとなっています。
以下、弊社による翻訳です。
日本酒業界の斬新な響き
マーケティングに巧みな旭酒造オーナーが獺祭の醸造用交響曲の作曲を依頼。
音楽が気分を和らげることは知られているが、美味しい酒を作るのか?山口県(本州の最西端)の岩国にある旭酒造は音楽を獺祭醸造に合わせる実験に挑戦。これはマーケティングの重要性を認知している、革新的な桜井博志会長のアイディアだ。「正直言って、どのような結果になるかは全くわからない。酒がよりまろやかになるかもしれない。新しい試みで結果が待ち遠しい」とコメントしている。
桜井博志は伝統的な日本音楽ではなく、「犬夜叉」、「プリンセスチュチュ」などのビデオゲーム、映画用のオリジナルな音楽を手がけることで有名な和田薫氏に交響曲の作曲を依頼した。酒造りのことは全く門外漢と話す和田薫氏の起用は、同じ山口県の下関市出身であることが理由。「獺祭の味わいと岩国の自然の景色をイメージした曲作りをしたい」と同氏は話す。
5楽章で構成される30分の「獺祭 磨」交響曲のうち、第1,2楽章は発酵と熟成をテーマにしたもの。2021年2月にセンチュリー交響楽団の本拠地である大阪府豊中で初演が行われた後、旭酒造の主力銘柄である、獺祭23の2000リットルタンクの周りで、発酵と熟成の間、24時間中流される。
この奇想天外な取り組みは、桜井博志のプロモーション試行で、世界的に有名
になった旭酒造にとっては、そう驚くことではない。
同氏が1984年に継いだ、小さな家族経営の旭酒造は、当時は普通酒しか作らず、破綻しかけていた。焼酎との競争、日本酒に爺さんの酒というイメージしかもたない若い世代の酒離れの中で、日本酒の消費量は激減していた。
桜井博志は酒の品質に賭けた。神道の神酒でもある日本酒の世界で、山口県は冴えない県であり、無謀な賭けであった。山口県下のいくつかの酒蔵は、隣の広島の大手の蔵元用に不味い酒を作っていた。
旭酒造の存続は若い消費者を取り込めるかどうかにかかっていると考えた、当時の若社長は、純米(醸造アルコールを添加しない、100%米だけで作られる)だけの獺祭ブランドをリリースした。獺祭とは「かわうその祭り」の意味で、かわうそは、山口でよく見かける動物であるが、また桜井博志は「夢を与え」、「酒に新しい息吹を吹き込む」ことを決心した。
品質を保証するため、旭酒造は日本酒では最高の米種といわれる山田錦のみを使うことにし、最高の山田錦を生産する米農家に表彰するコンテストを設立。2019年には栃木県の大田原市の坂内義信氏がグランプリに輝いた。旭酒造は同氏の米を1俵あたり、市場価格の25倍に相当する50万円(4300ユーロ)で買い取った。
「誰もが日本酒の中でなんらかの差をつけようとしている。(日本酒の品質がかかる)山田錦を精米することで、爽やかで果実の風味となめらかな味わいをもつ大吟醸酒ができる。飲みやすすぎるという人もいるが、この心地よいのどごしが好きな人もいる」と桜井博志は説明する。
日本酒の全国レベルでの生産量は減ったが、品質は向上し、世界中の有名レストランでサービスされるようになった。獺祭も例に漏れず、旭酒造の売上は2015年から2019年の間に倍増し、140億円(1億2000万ユーロ)に達した。東京の中でも、銀座のようなオシャレな界隈の居酒屋(バー)から始まった市場獲得は、次に1998年に最初の直営店をオープンした台湾を皮切りに海外に向かった。
2018年には、フランス人シェフのジョエル・ロブション氏は、亡くなる直前に獺祭とのコラボレーションで、パリのフォーブールサントノレ通りに獺祭バー・ブティックをオープン。また、「アメリカでの日本酒市場を発展・強化させるため」、年内にはニューヨークに生産拠点を設立し、獺祭ブルーという特別のブランドを立ち上げる。音楽を聞かせての生産になるかどうかはまだわからないが。
獺祭に音楽がどのような影響を及ぼすかは誰もわからないが、マーケティング力に関しては保証付きである