獺祭 登龍門DASSAI Artisanal Inception
担当ペア脇園大輝・松野康成
ー今回「登龍門」に参加したきっかけを教えて下さい。
松野:入社1年後~という応募資格を満たして、応募出来る事を知り、即座に製造部長にメールで直談判しました。1つの酒を最初から最後まで任せてもらうのだから、自分の覚悟・熱意をどうしても伝えたかったので。
お~!熱意が通じての、選抜ですね!脇園さんは入社4年で初めての「登龍門」ですね。その想いは?
脇園:現在、製麹チームの主任見習いをしています。自分にとって勝負の1年だと意気込んで、今まで学んできたこと人生ごとのせて、挑戦しようと思い参加を決めました。
ー脇園さんの決意が伝わってきます。そして、お互いペアが発表された時はどうでしたか?
脇園:応募当初、漠然と同世代とのペアだと思っていたのでびっくりしました。
実は、脇園さんは息子と同世代で。脇園さんとペアとなり関わる中で、自分の子供もこんな風に社会で活躍していたらいいなあと思いました。そんな親目線を感じつつも、酒造りの先輩としていいパートナーを選んでいただいたと思います。
ーそして8月下旬より始まった酒造りですが、お2人は当初どの様な目標をもってスタートしましたか?
脇園:ここは2人とも意見が一致して、「甘みがあって・香りも立って・後味はスッキリ、キレのある酒」でした!獺祭らしく、飲みやすいお酒を目指しました。
ー今回使用したお米は何処で作られたものですか?
松野:麹米は、2022年福岡県産・掛け米は2022年山口県産を使用しました。
せっかく2人で取り組むので、脇園君の出身地「福岡県」と旭酒造の蔵があり、自身のルーツでもある「山口県」と、特別な想いをのせて選びました。
脇園:また、2023年のご当地獺祭「福岡県産」の麹造りを担当したトコタンが、自分自身でした。福岡県産は良く溶ける米質で、「甘味」を表現するためにはぴったりの米と確信がありました。
ーん??トコタンってなんですか?
脇園:床(とこ)の担当、略して「床担(とこたん)」です!麹を造る「麹室」にはいくつかの「床台」がありそこに蒸した米を広げ、麹菌をふり、麹を育てます。自身の経験から、確信をもって取り組むことが出来ました。
ただ、その確信の通り、麹菌の繁殖が想定以上に進み、アルファアミラーゼが強すぎる麹が完成しました。
(アルファアミラーゼは米のデンプンを分解し糖に変えるため、甘味という部分を司ります。)
全ての工程において、いつもの仕込み量よりも少ない分、操作も難しく温度などの影響を受けやすいため神経を使いました。
仕込みのタンクで醪の発酵を進める中でも力強い麹の影響を受け、想定以上に甘味が先行したかたちでの着地となりました。
松野:とはいえ、実際にテスティングして、しっかりとした甘味も残しつつ、すっきりとしたアルコールのキレも表現できていたので、自信をもってお勧めしたいと思います。
脇園:親族の結婚式で自分のお酒を飲んでもらいたいと個人的な目標もあり、一足お先に振る舞うことが出来たのですが、家族に「飲み過ぎちゃうお酒」とお墨付きをもらいました(笑)
ー結婚式というあま~い空間にもピッタリで、飲みやすいお酒という意味ですね!松野さんは?
松野:私の妻はお酒にあまり良いイメージを持っていなかったのですが、(日本酒と言えば、黄色くて悪酔いするとか・・・)
実際に自分が造ったお酒を飲んで貰おうとグラスに注いだところ、透き通った酒の綺麗さと甘い香り・フレッシュさにビックリしていました。
ー奥さんの日本酒へのイメージ挽回にも一役買いましたね!最後に今回取り組んだ感想を教えて下さい。
松野:四季醸造のため、空調や清潔な蔵を保つ為の技術など、優れた機械を使用する利点を感じつつも、酒造りの工程は1秒・1度で大きく変化し、そんな世界全てを数値化・機械化はできないと実感しました。また、米粒の状態から実際に瓶に搾りとるまでの変化を全て経験し、非常に貴重な体験をさせてもらったと思います。